乳腺外科とは

乳腺外科のイメージ画像

当診療科は、主に乳房(乳腺、乳頭、乳輪 等)でみられる症状や病気を中心に診察、検査、治療を行います。
乳房が張る、またはしこりを感じる、乳汁が出る等、いわゆる「おっぱい」に関して気になることがあれば、こちらにご受診ください。
また成人女性は、各自治体で乳がん検診を定期的に受けることが推奨されていますので、お気軽にご受診ください。
当院では、視診・触診、乳腺超音波検査(乳腺エコー)などを行います。

乳腺外科でよくみられる症状

  • 乳房にしこりを触れる
  • わきの下にしこりを触れる
  • 乳房が赤く腫れている
  • 乳房が熱をもっている
  • 乳房に痛みがある
  • 乳房が張った感じがする
  • 乳房の皮膚にへこみやひきつれがある
  • 乳房に潰瘍ができて治らない
  • 腕を上げると痛みが走る
  • 腕を上げると乳房にひきつれ感が生じる
  • 乳首から分泌液(赤・褐色)が出る
  • 乳首にただれが見られる
  • 乳がん検診を受けたい
  • 健(検)診などで要再検査と言われた
  • セカンドオピニオンを受けたい
  • 乳がん手術等の治療を受けたので経過観察をしてほしい
など

乳腺外科で取り扱う主な疾患

乳がん、乳腺症、線維腺腫、乳腺嚢胞、乳管内乳頭腫、乳腺炎 など

腹部超音波検査(腹部エコー)

超音波とは人の耳では聞きとることができないとされる高い周波数の音波のことです。
この超音波を発信する装置を使って、検査したい部位(腹部 等)にプローブ(探触子)を当てていきます。
それによって返ってきた反射波(エコー)を同装置がキャッチし、コンピュータ処理を行うなどすると体の内部が画像化され、調べたい部位の病変の有無等が確認できます。
これが超音波検査です。

検査部位によっては、心臓超音波検査、頸動脈超音波検査、乳腺超音波検査と呼ばれますが、腹部で使用する場合は腹部超音波検査(腹部エコー)と呼ばれます。
利点として、X線撮影のように放射線によって被ばくするということがないので、妊婦あるいはお子さまでも不安なく受けられます。
また検査中に痛みがみられることはありません。
この場合、主に腹部の病気の診断をつけるために行われます。

検査時は、検査したい部分にジェル状のものを塗布し、その上からプローブを当てます。
超音波検査士等が操作をしながら、撮影部位の様子を確認していきます。
腹部エコーでは、肝臓、胆のう、膵臓をはじめ、腎臓等の病変の有無や大きさ、形などが確認できます。
検査時間は5分程度です。

乳腺超音波検査(乳腺エコー)

当院では、乳がんが疑われる、もしくは乳腺の精密検査が必要と判断された患者さまには、乳腺超音波検査を行います。
この場合、まず検査台に仰向けで寝ます。
主に乳房に向けて探触子(プローブ)を当て、超音波を発信していきます。
その際にプローブを動かしやすくするため、あらかじめ検査部位(乳房)の表皮上にジェルを塗布します。
超音波を乳房内部に向けて発信し、返ってきた反射波(エコー)を超音波検査装置内でコンピュータ処理するなどして乳房内部の様子が画像化されます。

乳がん検診で利用される場合は、画像で乳腺は白く、がんは黒く描出されます。
このほか、しこりがある場合は、その性質や状態が調べられるほか、リンパ節への転移の有無なども確認できます。
同検査は20~30代の女性に有効とされ、40歳を過ぎてからはマンモグラフィによる検査になることが多いです。
利点としては、X線検査のように放射線被ばくの心配がないので妊婦さんも受けられます。また検査時に痛みが出ることもないので体に負担をかけるということもありません。

乳がん

女性が発生するがんの中では罹患率が1位となっているがんで、乳がんは乳腺に発生する悪性腫瘍の総称です。
具体的には、乳管から発生する乳管がんや小葉上皮から発生する小葉がんといったものがありますが、全乳がんの患者さまの9割近くは乳管がんです。
ちなみに乳がんは女性特有のがんではありません。男性が発症することもあります。

40~50代の年代にかけて発症することが多く、エストロゲン(女性ホルモンの一種)が発症に関わっているとされています。
なかでもエストロゲンが分泌されている期間が長いと発症リスクが高くなると言われています。
具体的には、閉経が遅い、初潮の年齢が早かった、出産歴や授乳歴がない、経口避妊薬(ピル)を使用していた、更年期障害によるホルモン補充療法をしていたという場合です。
このほか、乳がんに罹患した家族がいる、飲酒、肥満も発症に影響するとされています。

また乳がんで現れる症状ですが、主に脇の下の近くに硬い塊を触れる、いわゆる乳房のしこり、乳房の皮膚のくぼみといったもので、しこりをきっかけに乳がんを発見したという患者さまも少なくありません。
ただ、しこりはある程度病状が進行しないと発見できず、多くは5mm~1cm程度の大きさになってから気づくことがほとんどです。

治療について

乳がんの治療は、病状の進行具合によって、手術療法、放射線療法、薬物療法が行われます。早期がんの状態で発見できると手術療法となります。
この場合、乳房円状部分切除術など乳房を温存する手術か、胸筋温存乳房切除術など乳房を全部切除する手術が行われます。

なお乳房を温存する場合は、再発予防のため放射線療法も組み合わせていきます。
また薬物療法を行う場合は、エストロゲンの分泌を抑えるホルモン療法(閉経前と後では使用する薬は異なります)、分子標的治療薬、化学療法になります。

甲状腺疾患

甲状腺は喉ぼとけの直下にある蝶が羽を広げたような臓器です。
内分泌臓器としては最大で、大きさは約4~5㎝、重さは15~20g程度もあります。

この臓器では、ヨウ素(海藻類等に多く含まれる)を材料にして甲状腺ホルモンがつくられ、分泌されています。
その働きとしては、体の代謝を高めるほか、子どもの成長などにも欠かせないホルモンでもあります。
これが何かしらの原因によって、正常な分泌が行われなくなると様々な症状がみられるようになります。
これが甲状腺疾患です。

甲状腺疾患は、大きく3つのタイプに分けられます。
1つ目は甲状腺の機能異常によって引き起こされる病気です。
この場合、甲状腺ホルモンが過剰に分泌してしまう甲状腺機能亢進症と機能低下によって甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症に分類されます。
代表的な疾患としては、前者がバセドウ病、後者には橋本病があります。
2つ目は甲状腺に炎症がみられることで起きるタイプです。
急性化膿性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎が含まれるほか、橋本病も甲状腺の慢性的な炎症をきっかけとして甲状腺ホルモンの分泌が低下していくので、慢性甲状腺炎とも呼ばれています。
3つ目は、甲状腺に腫れや結節(しこり)が発生し、甲状腺の形態が異常になっている状態です。
甲状腺全体が腫大化していく単純性びまん性甲状腺腫、甲状腺にしこりができるものとしては、甲状腺線種(良性・悪性)があります。

代表的な甲状腺疾患

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている甲状腺機能亢進症の代表的な疾患です。発症原因は、主に自己免疫疾患によって引き起こされます。
女性の患者が多く、男性の約5倍とも言われています。
世代としては、20~40代の方が多く見られます。

よくみられる症状としては、甲状腺の腫れ、動悸、眼球の突出です。 また甲状腺ホルモンが過剰につくられることで、代謝が異常に活発になることから、発汗、食欲旺盛、体重減少、易疲労性、手が震える、口が乾く、下痢、倦怠感、イライラする、不眠などの症状も現れるようになります。

検査について

診断をつける際は、血液検査で甲状腺ホルモンの数値を測定します。
また血液中に抗体がどの程度あるかを測定する抗体検査を行う場合もあります。

治療について

基本は薬物療法です。
甲状腺ホルモンの分泌を抑制する効果がある抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル 等)を服用します。
多くの方に有効とされ、寛解を目指していきますが、それまでに時間がかかる場合もあります。
また副作用が出やすいということもあります。
具体的には、かゆみや皮疹、肝機能の低下、無顆粒球症、関節や筋肉の痛みなどです。
症状が気になるという場合は速やかに医師の診察を受けるようにしてください。

橋本病

慢性的に甲状腺に炎症がみられていることから慢性甲状腺炎とも呼ばれます。
バセドウ病と同様に女性患者が多く、特に20代後半~40代の方が多いです。男性患者と比較するとその数は20倍近くになると言われています。

発症の原因としては、主に自己免疫疾患とされており、これによって甲状腺に炎症がみられるようになります。
さらに細胞が破壊されるなどして甲状腺ホルモンの分泌が不足していくと、機能低下が引き起こされ、様々な症状が現れます。

よくみられる症状として、甲状腺の腫れがあります。
また甲状腺の機能が低下するのに伴い、思考力や記憶力の低下、発汗作用の低下、皮膚が乾燥する、徐脈、貧血、疲れやすい、寒がっている、体重増加、便秘、声がかれる(嗄声)、むくみ(まぶた、舌、口唇 等)のほか、女性では月経異常も生じるようになります。

検査について

診断をつけるための検査として、血液検査で甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの数値(濃度)を確認するほか、自己抗体についても調べます。
また甲状腺機能低下症の患者さまはLDL(悪玉)コレステロールの数値が上昇するので、同数値も確認します。
さらに甲状腺超音波検査によって腫れ具合も確認していきます。

治療について

橋本病と診断されても、腫れがそれほど大きくない、甲状腺機能が低下したことによる症状がみられないという場合は、経過観察は必要ですが、何らかの治療を行うことはありません。

甲状腺の機能低下が明らかな場合は、薬物療法として甲状腺ホルモンを補充する治療を行います。
この場合、甲状腺ホルモン薬(T4製剤、T3製剤)を服用します。
ただ多量のホルモンを速やかに投与するのではなく、少量から始めていき、徐々に増加させていきます。
一定量になったら、それを維持しての服用を継続します。
服用方法は医師の指示に従ってください。
症状が治まったからといって自己判断で服用を止めることは止めてください。