外科とは

外科のイメージ画像

当院の外科は、いわゆる小外科を指します。
日常的に起きやすい、切り傷、すり傷、咬傷(動物に噛まれた傷 など)、やけど、褥瘡(床ずれ)などの皮膚(表皮、真皮 等)に生じた外傷の治療のほか、粉瘤、脂肪腫、石灰化上皮腫、ほくろといった皮膚のできもの切除、鼠径ヘルニアや肛門疾患(痔核、裂肛 当)などの診療をしていきます。

すり傷や切り傷、表皮のやけどといった軽いけがであっても、応急手当もせずに放置が続くと、黄色ブドウ球菌や破傷風菌などが傷口に入り込むことによって感染症を引き起こす可能性もありますので、しっかりとした処置が必要になります。
このような場合では、湿潤療法による治療を行います。

湿潤療法では、まず傷口を水でしっかり洗い流します。
そして、専用のドレッシング材で傷を密閉していき、傷口からは滲出液が染み出すようになります。
この場合、傷口の表面は常に湿った状態となるのですが、これが従来の消毒して傷口を乾燥させる方法よりも創傷(すり傷、切り傷)の治癒を促進させて、皮膚をきれいに再生させます。
なお治療中は浸出液が過剰にならないように適度にドレッシング材を変えていきます。

外科で治療を行う主な疾患

  • 外傷(切り傷・擦り傷・咬傷・挫傷、挫創・やけどなど)
  • 異物刺入(トゲや釘が刺さった時など)
  • 皮膚のできもの、皮下腫瘤(粉瘤、脂肪腫 など)
  • 痔の診療(切れ痔、いぼ痔など)
  • 痔以外の肛門周囲の疾患 など
など

すり傷

皮膚の一番外側にある部分(表皮)が、何らかの原因によって擦りとられ、剥がれている状態がすり傷です。
傷は浅いものの、表皮の部分は神経が走っている箇所なので、ただ擦って表皮のみに炎症があるという場合においても、深い切り傷よりもヒリヒリとした痛みは続くようになります。

ただ、やはり傷そのものは程度が軽いので、そのままにするという方も少なくないですが、放置が続くと細菌などに感染し、化膿してしまうこともあります。
また砂などを傷の中から取り除けない場合は、傷跡が残ってしまう場合もあります。
そのため、治療はできるだけ速やかに行うようにします。

切り傷

切り傷は、鋭い器物(ガラスや刃物 等)によって、傷口が鋭く切断された体表の傷のことで、日常生活でよく経験する傷のひとつです。
この場合、周辺組織につぶれはありません。
傷の程度は、損傷した組織の深さや幅によって診断内容は異なりますが、人によっては損傷の領域が、神経・腱・骨といった部位にまで及んでいる場合があります。

なお縫合処置をすぐにでもしなくてはならない状態とは、傷が血管や神経、腱までに達していて、完全に断裂してしまっている状態です。
このほか、切り傷から土やサビが混入してしまった場合は、重篤な感染症である破傷風などを罹患してしまう場合があるので、予防のために抗製剤を使用します。

また縫合処置は、多量な出血をしている場合にも行われますが、この場合は糸で縫うことで傷口を塞ぐということだけでなく、創傷閉鎖用テープ、医療用ホチキスを用いる場合もあります。

やけど

熱傷とも呼ばれます。
これは皮膚組織が高温によって損傷を受けている状態です。
症状の程度によって治療内容は異なります。
やけどは、熱湯がかかる、衣服に火がつく、さらに薬品や電流などによって生じます。
同疾患は、皮膚のどの部分にまで損傷が及んだかによって、1度熱傷、2度熱傷(浅達性、深達性)、3度熱傷に分類されます。

主な症状として、1度熱傷は表皮の部分で起きたやけどです。
この場合は、皮膚は赤くなって腫れ、ヒリヒリした痛みも出ます。
また2度熱傷は、真皮の層にまで達した熱傷になりますが、比較的浅ければ浅達性2度熱傷、真皮層の深い部分まで達していると判定されると深達性2度熱傷と診断されます。
どちらにしても患部に水疱(水ぶくれが)が現れますが、前者は水疱の底が赤くなっているのに対し、後者の水疱の底は白くなっています。
また2度熱傷からは瘢痕化しやすくなります。
一番ひどい状態の3度熱傷は、真皮のさらに奥である皮下組織まで損傷を受けている状態です。
神経まで損傷を受けているので痛みを感じませんが、炭化していたり、硬く乾燥した状態になっています。

治療についてですが、1度熱傷ではステロイドの外用薬を使用していきます。
2度熱傷では、まず感染予防のために水道水等で洗浄します。
その後、ワセリンの塗布や創傷被覆材等を用いる治療となります。
3度熱傷については、デブリドマンと呼ばれる厚くなった壊死組織を除去し、さらに植皮手術も行います。

良性腫瘤の摘出(粉瘤・脂肪腫など)

良性腫瘤の摘出とは

粉瘤や脂肪種といった良性腫瘤の摘出も当院で行っていきます。

粉瘤について

粉瘤とは、皮膚の陥入によって真皮内でつくられた袋に老廃物や皮脂が溜まったことによる半球状の腫瘤のことです。
通常は直径1~2cmほどですが、場合によっては10cm以上になる場合もあります。

発症部位としては、顔、首、背中、耳の後ろ側、鼠径部にできやすく、見た目はニキビにも似た腫瘤ですが、中央部に黒い点がみられるのが特徴です。
また自覚症状は現れませんが、患部が細菌に感染するなどして炎症するようになると発赤や腫脹、患部を押すと感じる痛みなどがみられるようになります。
外科的治療(腫瘤の切除)を行う場合は、粉瘤自体が大きくなって神経を圧迫している、稀ですが悪性腫瘍が(有棘細胞がん、基底細胞がん)発生する可能性があるという場合です。
切除する際は、局所麻酔薬の環境下で行うので日帰り手術が大半です。

なお感染している場合(炎症性粉瘤)は、切開して排膿し、抗菌剤を使用するといった治療を行います。

脂肪腫について

良性腫瘍のひとつで、脂肪組織がまるで腫瘍みたいに増殖している状態が脂肪腫です。
大きさは直径1cmもあれば、10cmもあるなどいろいろで、単発な場合もあれば多発することもあります。
皮下に軟らかい固まりとして存在し、40~50代で発症しやすく、全身どこでも発生する可能性がありますが、肩や背中で起きやすいと言われています。

軟部組織の良性腫瘍としては発症しやすく、原因は不明とされているものの、ある程度の遺伝性や外傷などがきっかけで起きるのではないかと考えられています。

自覚症状などはありませんが、大きくなって神経を圧迫することで疼痛が出るなど、体に悪影響を与える際に摘出をするための外科的治療を行います。
この場合は局所麻酔下による日帰り手術になります。
小さく切開し、なるべく患者さまに負担をかけないようにし、切除したら縫合して終了します。
局所麻酔では困難なほど大きい場合については、入院しての全身麻酔下での手術が必要になります。

痔核

一般的にはいぼ痔という病名の方がよく聞かれるかと思いますが、いぼ痔の正式な病名は痔核です。
これは肛門周囲の血流が悪化してうっ血してしまい、やがてこぶみたいに膨らんでしまっている状態を言います。
このこぶ状の塊は発生した部位によって、内痔核、外痔核と分けられます。
また痔核以外にも、切れ痔や穴痔など痔の疾患はありますが、最も多くの患者数を占めているのが痔核です。

内痔核について

内痔核とは歯状線(直腸と肛門の境界)の内側に発生している痔核です。
ちなみに歯状線の外側に発生した痔核は外痔核と言います。

発症してすぐの頃は、痛みのような自覚症状は現れず、出血が確認されるくらいのため病状を進行させやすいです。
痔核が大きくなると患部が肛門外へと飛び出すようになります(脱肛)。

なお脱肛が起きて間もなくは、飛び出した痔核は指で肛門内へと押し込むことで、また戻るようになります。
ただ、あまりにも大きくなると肛門の内側に収めることは困難となり、内痔核は常に歯状線の外側で剥きだしの状態になるほか、痛みの症状もみられるようになります。
この内痔核は、症状の程度を1 ~4度に分け、それぞれに応じた治療を行います。
治療が必要なのは2度以上からです。

内痔核の分類(「ゴリガー分類」による)

  • 1度:排便時に肛門管内に膨らんでくる程度の痔核
  • 2度:排便時に肛門外に脱出するものの、排便が済めば自然に戻る程度の痔核
  • 3度:排便時に脱出し、指で押し込まないと戻らない痔核
  • 4度:常に肛門外に脱出している痔核

外痔核について

歯状線よりも外側に発生する痔核を外痔核と言います。
この場合、運動量がハード、無理にいきんで肛門に負担をかける、仕事で立ちっぱなしになる、アルコールの過剰摂取、冷えといったことが原因となって、肛門周囲の血流が悪くなっていき、それらの部分が腫れている状態になります。
主な症状は痛みで、なかでも排便時に強い痛みがみられるようになるほか、血便や血液が下着に付着します。

治療について

内痔核と外痔核では治療の内容が異なります。
内痔核では、安静に努めるほか生活習慣を見直していく保存療法、原因とされる内痔核を切除していく手術療法(結紮切除術、PPH法)、保存療法と手術療法の中間あたりと言われている硬化療法(ALTA)やゴム輪結紮(けっさつ)法があります。

ALTA(ジオン注射硬化療法)とは

これは硬化療法のひとつで、脱肛した内痔核とその周囲に向けてジオン注による注射を1つの痔核に対して4ヵ所から打っていくものです。
ただ、注射の前に局所麻酔をしてからの施術となります。
3度の内痔核でも治療効果があるとされています。
注射によって、痔核は出血が止まって縮むようになって、そのうち血管も硬くなって、肛門からの脱出がみられなくなるという効果が期待できるようになります。

ゴム輪結紮法とは

内痔核を特殊な器具で摘まんで、その根元を輪ゴムで縛るようにかけていきます。
縛り上げることで、内痔核を壊死・脱落させていくという施術で、脱落していくまでには1~2週間程度の時間が必要です。
外痔核や内痔核でも患部が大きい場合は適用されません。
高齢者や寝たきりの患者さまによく用いられます。

外痔核の治療法

外痔核の一番の治療法は安静にすることです。
患部を温める、生活習慣を見直す(食事面で食物繊維をとる、ウォシュレットを使う、長時間座り続けない など)、薬物療法(肛門に負担をかけないために便を軟らかくする緩下剤の使用、痛みなどを抑える軟膏 など)を行うなどすれば、1週間程度で痛みなどが抑えられ、1~2ヵ月ほどで改善がみられるようになります。

裂肛

一般的には切れ痔と呼ばれる肛門疾患で、便秘等でよく見受けられる固い便の排泄や勢いがある下痢などによって、肛門の内側に傷がついてしまい、それによって排便時に強い痛みや出血がみられている状態です。
つまり常に下痢気味の方や便秘になりやすい方が裂肛を起こしやすいということになります。

比較的女性に多く見受けられるとされ、一時的なものですぐに治ってしまうのもあれば、再発を繰り返すなどして慢性的な状態になってしまうこともあります。
度々起きるようになると裂けている傷口が広がるようになって、炎症や潰瘍が常態化してしまうと、そのうち肛門ポリープが発生し、肛門が狭窄するようになります。
このような状態になると手術療法が必要です。

治療について

治療法としては、症状がみられて間もない頃は、主に保存療法となります。
具体的には坐薬や軟膏などの外用薬による治療になります。
このほかにも根本的原因でもある便秘や下痢を改善するための生活習慣の見直しとして、食物繊維や水分の摂取、便秘な方であれば便を軟らかくする緩下剤を使用します。

治療法としては、症状がみられて間もない頃は、主に保存療法となります。
具体的には坐薬や軟膏などの外用薬による治療になります。
このほかにも根本的原因でもある便秘や下痢を改善するための生活習慣の見直しとして、食物繊維や水分の摂取、便秘な方であれば便を軟らかくする緩下剤を使用します。

痔瘻

肛門周囲膿瘍とは、肛門内部の肛門陰窩から細菌(大腸菌 など)が侵入し、それが肛門腺に入り込んで周囲が化膿している状態です。
細菌の通り道付近に傷がある、または免疫力が弱っていると化膿しやすくなるとされています。

さらに症状が進むと肛門腺で化膿した膿を排出する出口が形成されるようになります。
つまり肛門内部の肛門陰窩から肛門腺を通って、肛門とは違う出口から膿が排出されるようになります(トンネルをつくるようになる)。
これを痔瘻と言いますが、一般的にはあな痔と呼ばれています。

痔瘻を発症してよく見受けられる症状は、肛門周囲の痛みや発熱といったものです。
また肛門周囲膿瘍によって膿が溜まっている部分があると、その部位に腫れや痛み、痔瘻によって膿が排出されるようになり、下着が汚れるようになります。

治療について

肛門周囲膿瘍であれば、膿を切開して取り除き、抗菌薬や痛み止めによる薬物療法が行われます。

また痔瘻では、痔核や裂肛のように外用薬などの薬物療法で改善効果がみられることは、ほとんどないので、この場合は手術療法となります。

手術療法としては、開放術、括約筋温存術、シートン法などがあります。
開放術は、痔瘻によって形成されたトンネルと肛門括約筋を切除する方法ですが、括約筋を大きく切除すると肛門が緩くなってトイレを我慢しにくくなるので、括約筋の切除の程度が少なくて済む場合に検討されるものです。
そのほかの方法もトンネル(瘻管)だけをくり抜く(括約筋温存術)など、肛門括約筋ができるだけ損傷されにくい手術内容となっています。